造り手が植えるものは、時代で変わったか
データ記事 / 公開 2026-08-27
造り手の創業時期ごとに、栽培品種の傾向を分けて見ると、古い層と新しい層では表に現れる名前が違います。ただし、これは市場全体の植栽面積ではなく、確認できた造り手の記録を読んだ結果です。
- 1979年以前59
- 1980〜1999年20
- 2000〜2009年29
- 2010〜2019年124
- 2020年以降103
まず、何を数えているか
この表が数えるのは、創業年と栽培品種の両方を確認できた造り手です。創業年だけ分かっていても品種が空欄なら入らず、品種が書かれていても創業年が分からなければ入りません。二つの情報がそろった記録だけを、創業時期の層に分けています。
| 創業 | 英語 | 品種が分かる造り手 | 多い品種(軒数) |
|---|---|---|---|
| 1979年以前 | –1979 | 59 | 甲州(34)、マスカット・ベーリーA(30)、メルロー(27) |
| 1980〜1999年 | 1980–1999 | 20 | メルロー(10)、シャルドネ(9)、マスカット・ベーリーA(9) |
| 2000〜2009年 | 2000–2009 | 29 | シャルドネ(16)、メルロー(11)、ピノ・ノワール(10) |
| 2010〜2019年 | 2010–2019 | 124 | シャルドネ(62)、メルロー(53)、ピノ・ノワール(42) |
| 2020年以降 | 2020– | 103 | シャルドネ(55)、メルロー(47)、ピノ・ノワール(43) |
そのため、表の各層の大きさは、実際に存在する造り手の数そのものではありません。特に新しい造り手は、栽培を始めたばかりで品種を整理中だったり、公式サイトに情報をまだ掲載していなかったりします。新しい層の母数が薄く見える可能性を、最初に含めて読んでください。
古い層に見える品種
古い時期に創業した造り手では、甲州とマスカット・ベーリーAが表の上位に現れます。どちらも日本ワインの歴史を語るときに繰り返し登場する品種で、甲州は日本で長く栽培されてきた白ぶどう、マスカット・ベーリーAは日本で交雑によって生まれた黒ぶどうとして公的な資料で説明されています。
この結果は、古い造り手がこの二品種だけを植えているという意味ではありません。メルローなども同じ層に現れますし、ひとつの畑で複数品種を育てる造り手もいます。表は、各層で確認できた造り手の中にどの品種名が多く出てくるかを示すもので、畑の面積や収穫量を比べるものではありません。
新しい層に現れる品種
創業時期が新しい層では、シャルドネ、メルロー、ピノ・ノワールが上位に現れます。海外で広く栽培されてきた品種が、日本の新しい畑でも選ばれていることが分かります。日本ワインの原料は、日本で生まれた品種だけに限られません。
ここで見えるのは、造り手が植えた品種の組み合わせです。受賞件数、ワインの販売本数、畑の広さ、品種ごとの収穫量を表から逆算することはできません。同じ品種名が多くても、それぞれの地域や仕立て方、醸造の考え方まで同じだとは限りません。
買ったぶどうは別の話
この集計に入るのは、造り手自身が植えたものとして確認できる品種です。契約農家から買ったぶどうや、産地から仕入れた果汁で造るワインは、造り手の製品であっても「その造り手が植えた品種」の集計には入りません。栽培と醸造を一体で行う造り手と、原料を買い付ける造り手を同じ列で扱わないためです。
また、造り手が品種を公表していない場合も、実際には植えている可能性がありますが、確認できないので表には出ません。ここでも空欄は、栽培していないという判定ではありません。公開情報から確かめられた範囲を、そのまま記録しています。
変化をどう読むか
創業時期によって表に現れる品種が変わる理由は、この表だけでは決められません。気候や栽培技術、市場で求められるワイン、苗木を入手できる環境、造り手自身の経験など、複数の要因が考えられます。時代が変えたとも、造り手が選び方を変えたとも読めます。
編集部の見立ては、「日本ワインなら甲州」という捉え方を、新しくできた造り手全体に当てはめないことです。甲州とマスカット・ベーリーAは重要な日本固有の品種ですが、現在の植栽には国際的な品種も並びます。表を結論ではなく、地域と造り手の背景を調べる入口として使います。
このページの出典
- nihon-wine.vercel.app 2026-08-27創業時期別の栽培品種表
- nihon-wine.vercel.app 2026-08-27造り手ごとの創業年と栽培品種の記録
- www.nta.go.jp 2026-08-27甲州とマスカット・ベーリーA、欧州系品種の公的な説明
- www.maff.go.jp 2026-08-27マスカット・ベーリーAの成立と日本ワインでの利用
- www.pref.yamanashi.jp 2026-08-27甲州とマスカット・ベーリーAが日本固有の品種であること