日本ワインマップ
記事の一覧へ

同じワインが、違う名前で出品されている

データ記事 / 公開 2026-08-27

品評会の結果をそのまま数えると、同じワインの受賞が別々に見えることがあります。出品名の揺れをどこまで畳み、どこで止めるかを、今回の名寄せから考えます。

銘柄
  • 1通り(そのまま)3023
  • 2通り665
  • 3〜4通り403
  • 5〜9通り183
  • 10通り以上28

出品名は毎年書かれる

品評会の結果に載る銘柄名は、造り手がその年の出品時に記入する名前です。商品名を恒久的に登録する共通台帳から写されるとは限らず、年号の位置、中黒、長音、送り仮名、全角記号、アクセント記号などが動きます。結果を見比べると、同じ造り手の同じワインでも、表記が少しずつ違って現れます。

この揺れは、品評会の結果が間違っているという意味ではありません。その年にどの名前で出品したかという記録としては、それぞれが成立しています。ただ、複数年の受賞を銘柄ごとに集計するときには、そのままでは同じワインが別々の行に分かれます。受賞件数も分割され、長く評価されてきたワインが、少ない受賞しかないように見えてしまいます。

出品名の通り数銘柄受賞
1通り(そのまま)30233394
2通り6651561
3〜4通り4031639
5〜9通り1831342
10通り以上28427
品評会が公表した出品名を、造り手ごとに畳んで4302件の銘柄にした結果。いちばん多いのは「桔梗ヶ原メルロ」で22通り。**畳まないと受賞件数が割れる**(同じワインが別の銘柄として数えられる)。年号の位置・中黒・送り仮名・長音・アクセント記号・全角記号の違いは畳み、畑名やキュヴェ名が違うものは畳まない(「北信左岸」と「北信右岸」は別の銘柄)。

表は、表記を畳んだ後の銘柄が、何通りの出品名で現れたかを示しています。そのまま一通りで現れる銘柄がある一方、いくつもの呼ばれ方をしてきた銘柄もあります。通り数が多いことは、必ずしも名前が不安定だという意味ではありません。長い期間にわたって出品が続き、その間に表記の習慣やラベルの呼び方が変わった可能性も読めます。

畳むもの、畳まないもの

機械で処理できるのは、意味を変えないと確かめやすい違いです。長音やアクセント記号の有無、全角と半角、記号の種類、送り仮名の違い、外来語の写し方の差は、周囲の語が一致していれば同じ銘柄として扱えます。年号の置き場所や空白も、銘柄そのものを分ける情報とは限りません。

一方、産地や畑、区画を示す語が変わると、同じ品種でも別のワインになりえます。北信の左岸と右岸は地理的な区分が違い、御坂と穂坂も同じ甲州の名前として一括できません。樽熟成と樽発酵のように造りが変わる場合や、待月と新月のようにキュヴェ名が変わる場合も同じです。

判断が文字だけで決まらない組み合わせは、公式の商品一覧や受賞情報を見ても、改称なのか別商品なのか確かめられないことがあります。その場合は無理に統合せず、別の銘柄候補として残します。受賞を増やして見せることより、違うワインの評価を一つに混ぜないことを優先します。

今回の確認では、一文字の差でも意味を持つものを一組ずつ見ました。機械的な正規化で済むものは先にまとめ、人が見なければ分からないものだけを後から判定しました。人の確認を加えても、根拠が足りないものを確定扱いにはしていません。

数える前に一つを決める

出品名は、瓶のラベルに印刷された正式名称と必ずしも同じではありません。省略されたブランド名、地域名の付加、品種名の省略、受賞表示の混入などがあれば、名前だけから商品を完全に復元できないこともあります。だから表の分布は、銘柄の歴史を直接測るものではなく、出品名の現れ方を整理したものです。

編集部の見立ては、表記ゆれを品評会側の不備として片づけないことです。公表結果をそのまま足せば、受賞の多い造り手も銘柄も正しく見えません。反対に畳みすぎれば、別のワインの受賞が混ざり、後から分け直すのが難しくなります。確実な差だけを畳み、決められないものを残す。その慎重さが、数えた件数の意味を守ります。

このページの出典

関連するページ